スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | | - | -
<< 一瞬と半永久と永久と | トップ | 思案するシアンはルナール〜前編〜 >>
また心が壊れる時
 授業でたまたま一緒になっただけの人がなぜか隣りにいる。狭いベッドで背中越しに伝わってくる他人の感覚が息苦しい。

 この人の熱烈なアプローチに、冷静な返事を返し続けてきたけど、彼が泣きながら幸せにするよ、と暑苦しく酒臭い吐息を振りまいて、新宿コマ劇場前の広場で絶叫した時に、私は鼻水垂れているよ、と言うつもりが、じゃあ、いいよ、と言ってしまって。
 でも、彼はポカンとして、急いで鼻水を袖で拭いたから、あれ、私、今、なんて言ったっけ?って思って、考えちゃったけど、彼は日本語を話す犬を前にした九官鳥みたいな顔してたから、鼻水垂れているよ、と言ったら、彼は本当?と言って私を抱きしめて幸せにするから、と叫んだ。やっぱり息苦しい。

 その日から一日にメールが10数件きて、私は自分の携帯が忙しく震えているのを横目に部屋でぼんやりしてた。それか寝てた。やっぱり恋人同士になってしまったのだ、と思う。

 週末は一緒に出かける。お決まりのデートスポットに行ったり、映画観たり、買い物したり、ご飯食べたり、彼の家に行って一緒に寝た。そんなある日のことだった。

 デートの待ち合わせに20分遅れてきた彼が、お前のことがわからないと言った。唐突すぎて何を言ったいるのかわからないから、黙って彼の顔を見ていると、何か喋れよ、と彼は言う。
 それでも、何も喋ることなんてないから黙っていると、彼は鼻先で笑って、お前はいつもそうだ、何も言わない、メールも返信しない、デートもいつも俺が誘うし、俺が連絡取らなかったらお前からは連絡してこない。本当は俺のことなんか好きじゃないんだろ?何とか言ってみろよ。
 やっぱり私は何を言ったらいいかわからないから、黙った。もういい、と彼はどっかに言ってしまった。めんどくさい。息苦しい。

 それから2週間後。大学からの帰り道、彼が家の前にいた。彼は私を見ると目を伏せて、左足を地面にぐりぐりと擦りつけた。
 どうしたの?と私が訊くと、彼は何でそんなに平気なんだ?俺がどんな思いでこの2週間を過ごしたと思っているんだ?お前から連絡が来るのをずっと待ってたんだよ。何でメールしてくんないんだよ?お前俺のことが好きじゃないんだろ?はっきり言ってくれよ。
 と、絶叫する彼の顔からやっぱり鼻水が垂れてて、こういうときは言わない方がいいのかな、と考えたけど、こういうことははっきり言ってあげたほうがいい気もしたから、鼻水垂れているよ、と言うと、それは本当か?もうダメなのか?と訊いてきた。私は、もう一回、鼻水が垂れてるよ。と言うと、彼は泣いてますます鼻水が垂れて、顔が冷凍庫に3時間入れられた4匹のブルドッグのうち運よく生きていたやつみたいになってた。もう、ダメなんだな。彼は帰っていった。
 私の胸はやっぱり息苦しくて、でも、なんでそんな気持ちなのかはわからなくて、鼻水が垂れているよと小さく呟いてみると、………………と聞こえた。
- | 12:06 | comments(0) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
- | 12:06 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://kyo-en-page.jugem.jp/trackback/10