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いぬのはなし 199×年
 初めて付き合った彼女はすっごいデブ専で、俺ときたら身長170cmで 体重59キロの中肉中背の面白みの無い身体だったわけなんだけどさ、今考えるとなんで俺と付き合ったんだなんて考えなくもない。

 ま、告白したのは確かに俺からなんだけど、あれは完璧に仕向けられていたし さ、だって、終電ないから家に泊めてと来て、寝るのは俺の隣で、わざわざベッ ドを空けて床で寝た俺のファックなチキンぶりが無駄な努力じゃん。ざわざわざわざわ。
童貞だった俺はそりゃあもう、ああ困ったわ、なんてしなを作るのに精一杯で目の前を見るとおっぱいがあったりして、意味不明なシチュエーションというわけで、その女とファックした。付き合った。大体終電もなにもその女、中野在住やん。隣駅やん。歩けるやん。なんてオチもあったりして本当にビッチでそんなところがジョジョ風に言えばズギューンだった。

 付き合う女はこいつしかいないと確信を持って言えるのは初恋のときだけ、とは断言しないけど、世界が狭くてその分の密度の濃い感情だった。ま、結局はイビツな関係に過ぎなかったかな。スタートしたのはいいのだけどさ、やっぱり慣れてないし、気は利かないし、情熱は空回りして、とにかく不慣れな恋愛関係で俺、馬鹿ばっかりやっては彼女をがっかりさせちゃったりしてて、あせる気持ちはあった。彼女は笑わなくなったし。逢う回数も減ってるし。このままじゃイカンのですよ実際。シット。

 で、初めて彼女と迎えたクリスマス。の日に振られた。他に好きな人が出来たとポツリと言って泣き出した彼女の前で泣いたら負けだと思って、俺じゃ駄目なのかと聞いて、やっぱり駄目で、そんなの判ってたけど、もう一回聞いた。俺じゃ、駄目か。泣き声が嗚咽に変わったときに、駄目なんだね、と切り出したのは俺だった。駄目なんだ。俺じゃ。でもやっぱりもう一度言った。俺こんなに好きだよ。彼女は、私も好きだよ、といういのだけど、それを聞いて俺の身体が弾けるのだけど、彼女は、好きなだけじゃ駄目なんだよ、と言って会話を打ち切った。

 『好きな人』がどんなやつかはわからないけど、きっとデブだ。太ったやつに決まってる。たまたま寂しかった彼女がファックな気まぐれで俺にふらりと近づいて去っていっただけだったんだ。去ればいい。去るもの追わずだ。冬でも汗かきのデブに死ぬほど暖めてもらえばいい。そいつの方がきっと暖かい。

 帰りに3000円のケーキを買った。ケーキなんて友達の誕生会でしか食べなかったけど、無性にケーキが食べたかった。ケーキが俺の一部になって俺が暖かくなればいいのに。そのあとに2人で食べるはずだったケーキを食べて少しは太ったかな、暖かくなったかな、って思った。でも身体はガタガタ震えてるし、汗もかかない。デブとは大違いだ。自分はガタガタ震えてただ涙を流すことしかできない。彼女を暖めることはできない。ジーザス。これじゃ振られて当然だ。

 そんなこんなで俺の初恋はジングルベルのゴングで終了したのだけど、そんな思い出のせいでクリスマスは何だか好きになれないし、その日だけは特にケーキを食べたくない。と思ってたんだけど、ふとしたきっかけで彼女にあってつい最近に。ファックな展開。別にファックしてはいないけど。喫茶店に入っておしゃべりした時に、今好きな人いるのかって聞いたら100キロオーバーのデブと一緒に写ってる写メを見せてくれた。
暖かい人なの、と付け加えて。



 俺もいつか暖かい人になれるかな。またクリスマスにケーキを食べれるようになって、暖かい人になれるかな。あの頃と何も変わってない気がするけど。でもあの頃の気持ちを持ったまま変われるなら、ひょっとしたら出来るかもしれない。少し怖いけど、出来るかもしれない。



その彼女に一つ言うなら、メリークリスマスと言いたい。

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