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ヘリコプター
 折角きみふさ君の話が出たことだし、彼が旅したときの話をひとつしてあげるね。

 彼はあのギアナ高地へ行ったのだけど、そこで彼は一人の少年に出会ったんだ。少年の名前は彼もよく覚えていなかったんだけど、円らな瞳と健康的な黒い髪がとても印象的だと僕に話してくれた。
 きみふさ君はある山に登ろうとしていたんだけど、多くの観光客がするようにヘリコプターで山頂まで行くのは絶対にいやだと思っていた。確かにその山頂にあるというロボットみたいな変わった形の石も魅力的であったけれど、彼はそこまでの道のりを。もうどうしようもないくらいに楽しみにしていたんだからね、当然といえば当然だ。だからガイドとして、いつも荷物を運ぶその少年を紹介してもらったんだ。
 15歳くらいに見えたその少年は10歳だといった。彼は背中に大きな籠を背負っていた。自分の荷物のためじゃない、温室育ちの観光客の荷物を効率的に背負うためだ(その写真をお見せできないのが残念だよ)。でも勿論きみふさ君は自分で持つといった。少年は不思議そうな顔をしたけど、そのあとで10歳の少年が見せるほっとした表情で微笑み返したんだって。
 途中で植物が彼方此方に乱れ咲いていたから、知りたがり屋のきみふさ君は沢山の質問をしたんだって。でもその少年はあまり興味がないような雰囲気で答えたんだって。というのもね、その植物は最近生えてきたものなんだって。聞いた話だと、観光客の服や靴にくっついてきた種が撒き散らされ、観光客の排泄物が十分すぎる栄養を与えた結果らしい。だから少年は観光客たちがここに住むつもりなんだとずっと思っていたんだって。そこまで興味を持っているのに誰も住もうとしないのは不思議なことだと言っていたんだってさ。そうじゃなきゃこんなに当たり前の風景を見にやってくる意味が分からないと、ちょっと皮肉っぽく言われたと、きみふさ君は感慨深く話してくれたよ。

 山頂に着いたときの気分は格別だったと彼は言っていたね。彼らが上っている間に、2つのヘリコプターに追い越されたんだけど、ちょうど彼らがついたときに降りてくるヘリコプターが在って、彼らは思わず顔を見合わせて悪戯っぽくこみ上げる笑いに身を任せたんだ。彼曰く、「勝った気がした」らしいよ。まったく、彼らしくて微笑ましい限りだよ。

 ま、その後彼らは来た道を10時間かけて下りたんだけどね。
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